■猫と暮らす100のアイデア CAT network
■Catの猫の話:「本はあてにならない−その2
Maine Coon International」 Issue 9, Autumn 1996
Cat Moody/Stormwatch Maine Coon より−翻訳:Hiroko


本はあてにならない−その2

前にお話したとおり、わが家の猫たちは本のいうとおりに行動する子は一人としていません。
私は猫の繁殖についてはかなりの権威であると(少なくともわが家の中では)自認しているし、また家の猫たちよりよっぽどよく勉強していると確信しています。
ところが、猫たちときたら、まったく本に書かれたことを無視するのです。
本の該当する部分をみんなに読みあげて、大事な点を何度いってきかせても、まったく効果がありません。
どうやら、猫のことは猫が一番良く知っていると思っているようすです。

たとえば交配についてみると、本を読むかぎりとても簡単なことのように思えます。
私は、もちろん本の一部を猫たちにきちんと読んで聞かせました。
「雌猫は腰をもちあげ、尻尾を横によけたポーズをとり、後脚で足踏みをする。
雄猫は雌猫の首筋をしっかりとかみ、交尾する。」
別に何も難しいことはないし、猫たちも特に質問はないようでした。


サンダ―は、5ヶ月半のときにこの講義をもれ聞き、即座に実行にうつしてしました。
これはまったく私の予期しなかったことで、本には、「雄猫が交配可能になるのは、生後10ヶ月以降である」 とはっきりと書いてあります。
確かに、サンダ―にこの部分も読んできかせたはずなのですが、勝手に何にでも予行練習がつきものであると解釈して、5ヵ月半で父親になってしまったのです。

ともかく、最初のころはサンダ―もいい子でした。
経験豊かな女の子たちが相手で、うまくサンダ―をリードし、サンダ―もお行儀よくふるまっていました。
いうなれば、まず女の子に花束やチョコレートを送り、次にやさしくキスをして愛をささやくといったぐあいです。

ところが、サンダ―も経験をつむにつれ、アメリカのティーン・エイジャーのように、 ロマンチックな手順はいっさい省略するようになりました。
そしてそのころ、最初の“フロッパー”にいきあたったのです。

“フロッパー”というのは(ご存知のとおり)、お尻を高く上げ尻尾をよけた完璧なポジションから、雄が乗っかったとたんにごろんと仰向けにひっくりかえってしまう癖のある女の子のことです。
仰向けになってしまうと、尻尾が脚の間から上にむけてひらひらする格好になってしまいます。
困ったことに、わが家にはこのフロッパーが二人いるのです。
ひ っくり返らないように、どうやって手助けをするか皆さんもご存知でしょう(ほら、ブリーダーなら誰でもやったことがあるはずです)。

まず、雄猫のケージの中に頭をつっこんで、なるべく体が中に入るように努力します。
たいていドアが狭いので、ひざをついてお尻をもちあげるという、絶対に人にはみられたくないようなかっこうをするはめになります。 (たまに、雄猫がこっちのほうがいいかもと、人間の方に関心をよせることがあるほどです)。
次に、雌猫がひっくりかえらないように、しっかりと後足とお尻をささえます。
雌猫 はこちらを向いてわめきたて、雄猫はなんでこんなところに入ってくるんだと迷惑そうです。
それでも、このさい助けになるならばなんでもありがたいと、雄猫が雌猫に乗りかか ります。
その瞬間に、雌猫がごろんとひっくり返ろうとするので、こちらは必死でそうさせまいと後脚にしがみつきます。
もしうまくいけば、雌猫がギャ―と大声で叫び、無事にことが成就します。
ここで、人間の方はすかさずケージからはいださなければなりません。
ところが、狭いケージにとんでもない格好で頭をつっこんでいるため、すばやく脱出するのは困難です。
雌猫が理性をわきまえていて、雄猫を攻撃してくれればいいのですが、あいにくと手じかにあるのは人間の顔です。
そこで、「ギャ―、痛い−!本のいうとおり、サンダ―を引っかきなさい!」と叫ぶはめになるのです。


サンダ―は、ツナミとマリアというフロッパー娘二人に慣れきってしまい、むしろたまには正常位のほうがいいと思うようになってしまいました。
ところが、モンスーンは勝手が違いました。
モンスーンは、地面に根のはえたような女の子で、いったん交配の姿勢にはいると、がんことして動こうとしません。
そこで、この前にサンダ―とモンスーンを交配しようとしたとき、ちょっとした問題がもちあがりました。

フロッパーに慣れきってしまっていたサンダ―は、モンスーンの首筋をかむと、さっそく横にころがろうとしました。
ところが、モンスーンがまったく動こうとしないので、サンダ―は首筋をくわえたままモンスーンにぶらさがる格好になってしまったのです。
モンスーンは、軽蔑しきった表情でサンダ―と私をにらんでいます。
その目は、「このマヌケはいったい何を考えてるのよ。まったく何てやつを連れてきたの。私はこんなバカなお遊びにつきあう気は全然ありませんからね。」と訴えています。
あわてて本をみましたが、“フロッパー”という見出しさえありません。
サンダ―の方は、まったく思考能力に欠けているため、どうしていいのかわからずただ首筋からぶらさがったままです。
恥ずかしながら、また私が手伝ってサンダ―を乗せなおすことになりました。
このことがあって以来、モンスーンはサンダ―が大嫌いになってしました。
子猫が生まれたあと何ヶ月もたってからでも、サンダ―をみるといやな顔をするほどでした。

時がたっ て、もう一度モンスーンを交配する時期がきても、サンダ―を寄せつけようとしません。
モンスーンは、それまでわが家で“カブキ”(去勢済みのオスでなぜか家の女の子たちに絶大な人気がある)のファンクラブに入っていない唯一の女の子だったのですが、今回ばかりはサンダ―よりもまだカブキの方がましと思いはじめたほどでした。

モンスーンのために、1―2週間のつもりでサンダ―をオーナーから借りてきたのが1月のはじめでした。
それから、6ヶ月のあいだ、モンスーンはサンダ―をにらみつけて、いっさい拒否しつづけたのです。
6ヶ月の間に少なくとも何度かは発情中だったはずですが、頑としてサンダ―を近 くに寄せつけません。
6ヶ月もたつとさすがに、オーナーがサンダ―を返してほしいといってきたので、このさい非常手段に訴えることにしました。
まず、ダンと私で「あーあ、 サンダ―が木曜日に帰ってしまうなんて寂しいね。サンダ―とモンスーンの子猫が見られなくて本当に残念だ。木曜日にサンダ―を送っていくから、今のうちに車にガソリンを入れておこう。」と家中でわざと聞こえるように言ってまわりました。
モンスーンの様子をうかがうと、じっと聞き耳をたてて、私達の会話を聞くたびにみるからに晴れやかな顔になってきます。
次に、恥ずかしながら(なんだか恥ずかしがってばかりいますけど)、実際に木曜日の朝には、大騒ぎでサンダ―をキャリーにいれて、何度もさよならをいい、サンダ―をリビングまでつれていきました。
そして、女の子たちの部屋の壁に耳をつけて待ったのです(家の女の子たちは人が見ていると、絶対に発情の鳴き声をあげないので、誰が発情中かは部屋の外から声を聞いて判断するしかないのです)。
24時間もしないうちに、まぎれもないモンスーンの呼び声が聞こえてきました。

「1、2、3」で、ダンがドアを開け、私がサンダ―を抱えて部屋に駆け込みました。
モンスーンはあまりにもびっくりしたので、動くことができません。
その隙に、サンダ―が乗りかかりました。
ところが、ここでまた一つ問題がもちあがったのです。
サンダ―のフロッパー対策の一つとして、床がすべらないように、ケージの中にドアマットを敷いていました。(よく猫を見にきた子供が「ねえ、ママ、どうしてあの猫だけマットがあるの?」とたずね、お母さんは「あら、本当ね。どうしてですの?」と聞かれます。このような場合、たいてい嘘の返事をすることにしています。)
サンダ―は、いつもこのドアマットの中央で、ことにおよぶ習慣になっていたのです。
どの本を読んでも、ドアマットが癖になって、雄猫がこれなしではできなくなる場合があるなどとは書いてありません。
ところが、どうやらサンダ―の場合は、ドアマットがなくてはならないものになってしまったようです。
モンスーンは、岩のように不動の姿勢をたもっています。
サンダ―は、モンスーンの首筋をくわえて、何とかマットのところまで引っぱっていこうとします。
ところが、モンスーンはまったく動くつもりはなく、サンダ―のバカなお遊びにつきあう気は毛頭ありません。
サンダ―がモンスーンをひきずろうと四苦八苦しているままその場で3分が経過し、とうとう私の方に向かってなんとかしてくれと目で助けをもとめてきました。
もうこうなったらしかたないので(本当に我ながらなさけないと思いつつも)、サンダ―とモンスーンを一緒にもちあげて、マットの上に移動させました。
これで何とか今回もうまくいきました!


さて、猫が妊娠したかどうかの確認の仕方についても、本を読むかぎりではごく簡単なように聞こえます。
「受胎後21日目に、雌猫の乳房が“ピンクアップ”する。」とあり、このとおりならなんら疑問の余地はなさそうです。
ところがどっこい、家の女の子たちは、21日目にピンクアップしたためしがありません。
発情中にピンクアップする子もいれば、11日目や33日目、6週間半たってピンクアップする子もいましたが、21日目というのは未だにお目にかかったことがありません。
中には、まったくピンクアップせずに、そのまま出産した子もいたほどです。
困ったことに、いつも21日目になると雄猫のオーナーから電話がかかってきて「どう、もうピンクアップした?」と聞かれるのです。
いつもよくわからないのですが、しかたがないので「少しピンクアップの兆候がみられる。」と答えることにしています。
私達はピンクアップしたかどうかにたよらずに、自分たちの感で妊娠したかどうか判断することにしているのですが、どうもこちらの方が正確にあたるようです。
あるときには、どういうわけか交配後3日目で妊娠していると感でわかったこともありました。
またあるときには、実際に出産が始まるぎりぎりまで、妊娠しているのかどうかはっきりと確信のもてなかったこともあります。
でも、「役立たずの本」ときたらどこをみても、感で妊娠を判断する方法について書いてありません。

そこで、私達の直感判断法が正しいのかどうか未だにわからないのです。




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